こんにちは、つまがり雄也です。
先日、町の話をする会で「自転車の走行が怖い」というお話を聞きました。そこで、他の地域ではどのような取り組みがあるのかを調べました。今回は、その中から石川県金沢市の事例を紹介します。
なお、この記事は取り組みの評価ではなく、公的資料にもとづく事例の紹介です。
詳しくは、YouTubeでも解説しています。
そもそも「青切符」とは
2026年4月1日から、自転車にも「交通反則通告制度」、いわゆる青切符が適用されています。
- 反則金を納めると、刑事裁判などを受けずに事件が処理される仕組みです
- 対象は16歳以上です
- 自転車は道路交通法上「軽車両」にあたります
今回紹介するのは、この制度が始まるよりずっと前から取り組まれていた事例です。
事例のあらまし
場所は、石川県金沢市の国道159号です。浅野川大橋から山の上交差点までの約1kmの区間で、2007年(平成19年)に社会実験が行われました。実施したのは国土交通省 金沢河川国道事務所です。
- 4車線で両側に歩道がある幹線道路です
- 交通量は1日あたり約13,700台です
- 歩道の幅は0.8〜1.5m程度と狭く、自転車通行可の指定はありませんでした
- 周辺には小学校や高校があります
※最近の資料では「旧国道159号」と表記されています。
当時の課題
- 自転車利用者の約4割(666台中291台)が、朝7時台から8時台に集中していました
- 「車道の左側端通行」「並進禁止」といったルールは、ほとんど守られていなかったとされています
- 小学生や高齢者が、安心して歩道を歩けない状態でした
- 一方で、路肩が狭く、自転車の走る位置も分かりにくい状況でした
4つの対策案から、路肩走行の指導強化を選択
考えられた対策は、①歩道の拡幅、②無電柱化、③車線数の見直し、④路肩走行の指導強化の4つです。
①〜③は時間やコストの面から早期の実現が難しいとされ、④は時間・コストが少なく早く効果が期待できるとされました。朝7時30分〜9時は両側1車線がバス専用レーンだったため、このバスレーンを使った社会実験が検討されました。
ポイント① 関係者が集まる協議会
バスレーンの左側端通行は、自転車とバス・クルマが同じ車道を走る「混合交通」になります。安全性や走りやすさについて様々な議論が予想されたため、次の関係者による協議会が設立されました。
地域住民、PTA、学校関係者、バス事業者、市民団体、学識者、警察、行政
協議会の資料は、すべてホームページで公開されています。
ポイント② 事前アンケート
事前アンケートは10,088名に実施され、4,229名(42%)から回答がありました。バスレーンの左側端通行についての意見は、賛成が約4割、不安が約4割、反対が約2割でした。
- 賛成の意見:「歩行者が安全になる」「自転車が走りやすくなる」など
- 反対の意見:「車道は怖い」「危険」「クルマの邪魔になる」など
- 自転車で走る回答者からも、約6割が「対象区間は自転車にとって危険」と回答しています
ポイント③ 「自転車走行指導帯」とは
バスレーンの中に、幅1.25mの「自転車走行指導帯」が設置されました。
- 自転車専用通行帯ではなく、バスレーン内に設ける「走る位置の目安」です
- 幅は、必要最小限の1mに余裕幅を加え、並進の防止も考えて決められました
- 色は明るい「灰桜色」で、畳一畳分の着色帯を30cm間隔で配置しています
- 滑りにくい舗装材を使用しています
- 電柱などに看板を設置し、ルールの順守を呼びかけました
ポイント④ 周知と街頭指導
社会実験は2007年3月19日から、約2か月間の予定でスタートしました。
- 事前アンケート1万部、チラシ2万部を配布
- 横断幕や告知看板を設置
- 路線バス27台の背面に広告看板を掲出
- 新聞・テレビ・ラジオ・情報誌と連携
- 高校での出前講座を実施
街頭指導は計3回(3月19日の実験初日、4月16日の入学式後、5月11日の春の交通安全運動初日)行われ、ドライバーにも、バスレーンの順守や「ゆずりあい・思いやり」が呼びかけられました。
実験の結果
自転車の走り方の変化
朝のバスレーン時間帯(7:30〜9:00)の調査では、車道の左側を通行する自転車の割合(ルール順守割合)が、実験前の約20%から実験中は約84%になりました。右側逆走などのルール違反の自転車は減少しています。
歩行者・自転車・ドライバーの声
- 歩行者:実験前は73%が「危険」と回答し、実験中は70%が「安全」と回答しました
- 自転車利用者:「安全」の回答が15ポイント、「走りやすい」が24ポイント増えました。ただし「クルマと一緒に走るのは怖い」という声も残っています
- ドライバー:約3割が「逆走・並進・急な飛び出しの心配が少なくなった」「ルールを守る意識が強くなった」と回答しました
実験期間中、事故発生の報告はなく、バスの定時性にもほとんど影響がなかったとされています。
その後の広がり
- 2007年10月1日:社会実験を9月末で終了し、終日(24時間)の実施へ
- 2008〜2009年度:石川県が東金沢停車場線で、県内初の自転車専用通行帯を整備
- 2010年度〜:金沢市が計画を策定し、細い道にも「自転車走行指導帯」を整備
- 2011年2月:国・県・市・警察などによる「金沢自転車ネットワーク協議会」を設立
- 2023年9月:同協議会が第27回を開催
国土交通省の資料では、この事例は「全国初の車道混在型の整備事例」とされています。
※現在の現地の状況(指導帯が今も残っているかなど)は、今回の調査では確認できていません。
研究報告で示されていること
徳島大学リポジトリに掲載されている研究論文では、金沢市の自転車走行指導帯の整備について、次の内容が示されています。
- 金沢市内の自転車事故が、10年間で65%減少した
- 整備した路線で、左側通行が遵守されている
- 整備路線での交通事故が、従前の約40%に減少した
いずれも金沢市の整備全体についての数字で、国道159号の区間だけの結果ではありません。
うまくいった背景(報告書より)
報告書は、要因として次の点を挙げています。
- クルマの旅行速度が自転車に近いこと
- 大きな交差点が少ないこと
- バイク・スクーターが比較的少ないこと
- バスレーンを利用したこと
- 警察・学校・地域・バス事業者・道路管理者などが一体となって取り組んだこと
また報告書では、同じ条件の道路であれば、他の地域でも導入可能と考えられるとされています。
まとめ
- 青切符の前から、金沢では2007年に全国初の事例として取り組みが始まっていました
- 協議会、アンケート、周知、街頭指導と、合意をつくるプロセスがありました
- 社会実験から本格実施へ、そして県・市の整備や協議会の設立へと広がっています
自転車の走り方について、先進的な取り組みをされていたのだなと感じました。この内容は、YouTube「ツマッチちゃんねる」でも動画で紹介しています。ご意見・ご感想もお待ちしています。
参考資料